ご飯の食味評価について
| 毎年11月中旬に、米食味鑑定士協会主催で、お米の全国食味分析鑑定コンクールが開催されます。 全国から、1次審査・2次審査で選抜された、様々な品種の農家の自信作が寄せられ、品種ごとの金賞が選ばれた上で、全出品米の中から最優秀のお米が選ばれます。 |
![]() コンクールの様子 |
お米の食味って何?
ところで、「ご飯の食味」ってどうやってわかるのでしょうか?
基準は何でしょう。そもそも客観的な評価が可能なものなのでしょうか?
お米の食味とは通常、炊き上げたご飯の食味のことです。
このご飯の食味に影響を与える因子は、以下のように言われています。
匂い、味(科学的因子)・・・21.5%
粘り、歯触り(物理的因子)・・・62.0%
その他・・・16.5%
いかに物理的な影響が大きいかが伺えます。
さて、美味しいご飯と、不味いご飯を、電子顕微鏡で解析すると
その表面や断面に歴然とした違いが見られます。
美味しいご飯には、表面にも断面にも、整った網状構造が見られるのに対して、不味いご飯にはそれがないのです。
また、本当に美味しいご飯は、冷めても美味しい、と言います。
実はこれにはちゃんとした根拠があります。
美味しいご飯の理由は
美味しいご飯の、美味しさの理由を、1.品種、2.産地のの2つの観点から見ていきましょう。
1.品種から見た美味しさの理由
-日本のご飯の食味はコシヒカリが標準-
うるち米では、1956年に誕生し、現在も食味最高ランクに位置するコシヒカリが、日本人の米の食味標準を作り上げました。
現在わが国で流通する一般米の大半は、コシヒカリとその系統の品種です。
その特徴は、粘りが強く、甘みが多いことで、その化学的背景は、含まれるデンプン成分のうち、アミロースが少なく、アミロペクチンが多いことです。
コシヒカリは、このような化学組成の特徴以外にも、“炊き上げた時の光沢がきらきら”していたり、“のど越し”が良かったり、“口に入れた時鼻に抜ける香り”が素晴らしかったり、“食べた後も甘い余韻が残ったり”本当に美味しい完成されたお米だと思います。
-コシヒカリは作りにくい-
ところが、このコシヒカリは実は大変作りにくいお米なのです。丈が高く伸びるので、倒れやすく、台風や大水など自然災害の影響を受けやすいお米です。コシヒカリは晩生なので、時期的にも台風シーズンとぴたっと重なってしまいます。そして何よりも病気(いもち病)に弱い!どうしても農薬を多く使うことになります。更に過剰生育(植え付け密度が高い)すると、すぐ味が落ちます。そういう意味では、農家泣かせのお米なのです。
コシヒカリ以降、いわゆるコシ系のお米(はえぬき、アキタコマチ、ひとめぼれ等)は、すべてこのようなコシヒカリの作りにくさを克服するために開発された品種、と言えます。これらの品種の中には、香り・つや・甘み等それぞれの特徴ではコシヒカリを上回るお米も現れています。
しかし「食味の総合力」という点では、今でもコシヒカリが王座にあると、私は思います。
-コシヒカリでも、コシヒカリじゃない?-
最近ちょっと気をつけていただきたいこと。それは同じコシヒカリを名乗りながら、作りやすく品種改良されたコシヒカリが出回り始めていること。もともとコシヒカリは福井農業試験場で開発され、北陸以西の西南暖地むけの品種です。高橋剛と仲間たちがコシヒカリを作る山形は、コシヒカリの作付け可能北限にあたります。そこで、更に寒冷地でも作付け可能に品種改良したものを、コシヒカリの名前を変えずに普及させる試みが始まっているのです。
これは本来明らかに品種改良ですから、名前を変えるのが本筋だと思います。しかし現在のお米の流通の中では、コシヒカリというブランドはあまりにも強い、そこで名前を変えないで中身を替えるという苦肉の策が出てきたのです。
-異なる品種をブレンド、それって-
さて、食味と品種のお話の最後に、ブレンドについて一言。
ご飯の美味しさをさらに上げたければ、1品種よりもブレンドの方が勝る可能性があります。高橋剛さんは、ご自分の家では、コシヒカリ60%・ササニシキ40%の割合のブレンド米を召し上がっているそうです。
ササニシキは、今でこそ作付面積が急減し、見かけないお米になりつつありますが、かつてはコシヒカリと並ぶ良食味米でした。しかし時代のトレンドがコシヒカリの“モチモチ感と強い甘み”に傾いていく中で、ササニシキの“あっさりとしたのど越しの良さ”は次第に隅に追いやられていきました。(今でもこだわるお寿司屋さんでは、ササのファンが多いのですが)
一見異なった特徴をもつコシヒカリとササニシキ、これをブレンドして炊くと・・・、なんとそれぞれの良さがかえって引き立って、粘り(というよりもコシ)があるのに、のど越しがよく、香りがあって、余韻がある、本当に美味しいご飯になるのです。
実は、私は違った特色をもつお米(わざと新米ではない)をいくつか買い揃えて、組み合わせやブレンド割合を毎回変えて楽しんでいます。その結果わかってきたのは、私たちの食味感(何を美味しいとかんじるか)は、体調や季節によって変わること、そしてこれが大切なのですが、微妙な食味を楽しむことで、自分自身の食味感が自分でわかるようになる、ことです。
2.産地から見た美味しさの理由
| 品種のお話が長すぎたので、産地と食味の関係については、一言だけ。 それは、平地の米と中山間地の米を"比較すると、中山間地のお米の方が、食味が良い ということです。(お米の美味しい産地としては、新潟県南魚沼地方が有名ですね。ここは、典型的な中山間地です。真室川も、全く同じような地形・気候地域です) |
![]() |
これは、お米を顕微鏡で解析すると、その断面構造や、デンプンの形の違いとして、はっきりわかります。(次号以降で、電子顕微鏡断層写真をお見せします)同じコシヒカリでも、産地によりはっきりと違いが見られるのです。
なぜこのような差が生まれ、それがどうして食味に反映されるのか、俗説では
a.水が違う
b.昼夜の温度差が違う
c.肥料・土が違う
等々諸説がありますが、まだはっきりしたことは解明されていません。
ここでは、産地による食味の違いは、成分内容(おいしい物質が加わったり、なくなったりする)ではなく、お米の構造によるのだ、ということを覚えておいてください。



